ブラウン管の中の彼女


「ごめん…実早ちゃん」


ぎゅっと抱きしめてくれた。


「樺摘さんが実早ちゃんにまでそういうこと言うと思わなくて…」


ごめんともう一度囁くように言われる。


「祐ちゃんもなにか言われたの…?」


あの野郎…。やっぱり呪っとくか?


「別れろって。でもそんなの僕たちの問題だろ?樺摘さんにどうこう言われることじゃない」


すこし強めの口調の祐ちゃんがその瞬間はとても頼もしく思えた。


「好き…」


なんだか安心して泣きそうになってしまった…。


温もりが居心地よくて不安な心が慰められていく…。


そうして祐ちゃんはささやかなキスをくれた――…。


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