ブラウン管の中の彼女


「その直後だったかな。樺摘から電話がかかってきたのは」


ということは樺摘さんもあの実早ちゃんの告白を見たわけだ…。


「樺摘の電話の内容は実に簡潔だった。たった一言“実早だけはだめだ”そう言ってきた…」


ギュッと缶を握り締める。


多分、樺摘さんにはわかってたんだ。


僕も実早ちゃんのことが好きだってことが…。


きっと僕たちが付き合いだすってことも、何もかも…。


「祐一郎、私はお前が誰と付き合おうが自由だと思う。でも樺摘の言い分も聞いてやってくれないか?あいつも昔、芸能界にいたからなにか思うところがあるのかもしれない」


母さんは僕の手から空っぽになっていた缶をとった。


「あいつも祐一郎が心配なんだよ」


最後にそう言い残し母さんは仕事に戻って行った―…。


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