ブラウン管の中の彼女
「ただいま」
誰もいない部屋に向かってこの言葉を吐くのはどれだけ虚しいだろうか?
そうだった…。
実早ちゃんは泊りがけの仕事だし、樺摘さんはまだ病院にいる。
今この家にいるのは僕ひとり。
自分で犯した失敗が悔やまれる。
ただいまと言っても返事がないと、ひとりだということを実感するだけだ。
夕飯の支度でもするか…。
今日の夕飯はロールキャベツ。
煮込みものだけど樺摘さんが帰ってくるのはいつも遅いから丁度いいだろう。
そう思い、準備に取り掛かる。
おっとその前にカバンを部屋に置いてこよう。
僕は階段を上り、自分の部屋へ向かった。