ブラウン管の中の彼女
仕事に家事に疲れる両親の背中を見ていた祐一郎は自分から手伝いを始めたらしい。
言われてもいないのに食器を洗い、洗濯機を回し…。
最初こそ失敗していたものの、そこは医者の家系の子供だ。
すぐにコツを会得し、要領よくこなせるようになった。
………まだ小学生になりたてのガキだったのに。
祐一郎を見ていると自分の幼いときのことをよく思い出す。
あいつ同様、俺の両親…つまり祐一郎の祖父母も医者だった。
姉さんが18歳の時に結婚して家を出てった時、俺はまだ8歳だった。
忙しい両親は俺にかまう暇もなく、必然的にひとりで過ごすことになった。
ひとりっきりの部屋で思うことはひとつ。
……“良い子”にしていよう。