ブラウン管の中の彼女


「ごちそう様」


用意されていた朝飯を残らず平らげ、食器を洗う。


水切り台に洗剤を濯いだ食器をのせていると、時計は既に7時を指していた。


そろそろ出掛けるか…。


医者としてまだまだの俺は研修中もたっぷりと雑用を仰せつかっていた。


………義兄さんから。


俺はなんとなくあの人が苦手だ。


へらへら笑ってたかと思えば急にまじめな顔になる。


そのギャップに追いつけなくなる時がある。


怖いな…。


きっと姉さんとの結婚もそうやって説得したに違いない。


いくらうちの両親とはいえ、10歳も年上の男に高校卒業と同時に娘をくれてやるほど寛大ではない。


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