ブラウン管の中の彼女
「もてる男はつらいね~♪」
でた…元凶が!!
俺は恐る恐る振り返った。
「義兄さん、余計なこと言わないでください。騒がれて困るのは俺なんですから」
あとスキップで廊下を歩くのはヤメテクレ。
「ん―?僕は元モデルって言っただけだよ?樺摘くんがKATSUMIだなんて言ってませ~ん!!」
同じことだろ、コノヤロウ。
いい歳こいた大人が屁理屈こねてるんじゃねえよ。
「間宮先生、そろそろ午後の診察の準備に行きたいんですけど…」
「どうぞどうぞ」
了承を得たので、俺は義兄さんを放置することにした。
「あ、そうそう」
隣を通り過ぎようとしたとき義兄さんが思い出したように手をポンと手のひらに打ち付けた。
「樺摘くん、佐和に聞いたけど祐一郎に余計な手出しは無用だよ」
穏やかな口調とは裏腹にその声は鋭さを持っていた。
「これでも祐一郎のことは信頼しているんだ。僕の息子だからね」
そう言うと義兄さんは来たときと同様にスキップで走り去っていった。
やっぱり俺はあの人が苦手だ。
改めて実感した―…。