ブラウン管の中の彼女
「姉さん…」
「祐一郎はちゃんとわかってる。お前は分かってなかったみたいだけどな」
そしてハハッ声を上げて笑い出した。
「大体、単純一直線の実早がそんな深いこと考えてるわけないだろう?」
「……そう…だな」
蹴られた腹がズキズキと痛む。
俺はとんだ蹴られ損らしい。
でもそのおかげで頭が冷えた。
「祐一郎」
「あ…樺摘さん」
気まずそうに見上げる頭をガシガシと撫でつける。
「研修も終わったし俺は帰る。お前は…好きにしろ」
祐一郎は驚いたように目を見開いた。
もう俺がいちいち心配する歳でもないしな…。
「じゃあまたな」
「あんたなんか二度と来るな!!」
祐一郎の代わりに実早が強烈な捨て台詞を吐いた―…。