ブラウン管の中の彼女


「名前。前は福永さんって呼んでた」


指摘すると太一は嫌そうに顔をしかめた。


「あいつの本性がわかった以上、気を使う必要なんてないからな」


吐き捨てるように言う態度には実早ちゃんへの憎しみがこもっていた。


「ああっ!!思い出しただけであいつに蹴られたわき腹が痛むぜ!!」


うぅっ!!と泣き真似をする仕草に偽りは感じられない。


どうやら飛び蹴りを食らったのは本当らしい…。


「そんでどーすんだ?実早はいかにもお前と話す気満々で様子を窺ってるんですけど?」


太一は僕の肩越しに実早ちゃんを盗み見た。


「しばらくはこのまんまかな…大体、実早会が本当に存在してるかもよくわかんないし」


そうそう。もしかしたらみんなたまたま僕に目をつけて仕事を頼んだのかもしれない。


「そんな甘いこと言っていられるのも今のうちかもしれないぜ?」


太一の予感が現実のものとなって襲い掛かってきたのは数日後のことだった。



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