ブラウン管の中の彼女
「はあ…」
僕は詰めていた息を吐き出した。
なにが“福永実早の学校生活をひっそりささやかに見守ろう会”だよ。
ひっそりどころか目立ってるじゃないか…。
「……大丈夫…?…」
塚原さんは相変わらずの無表情で僕に近寄ってきた。
「大丈夫だよ。これくらいで済んでよかった」
唇に滲んだ血を親指で拭う。
事態を見守っていた人はひとり、またひとりと消えて行った。
「塚原さん」
廊下に残されたのが僕達だけになると声が大きく響く。
「実早ちゃんには内緒にしといてね」
人差し指を口に当てながらそう言うと、塚原さんはかすかにうなずいた―…。