ブラウン管の中の彼女



「お前どんなマジック使ったんだ?」


「なんのこと?」


僕は文庫本から一旦顔を上げた。


「だってあの実早が大人しくしてるんだぜ!?」


太一は自分の席についている実早ちゃんを指差した。


「なにもしてないよ」


僕はね…。


「悪いもんでも食ったかなあ…」


「そういうこと言ってるとまた跳び蹴り食らうよ…?」


一回だけやられたことあるけどあれはとてつもなく痛い…。


「あれっ?塚原さんどうしたの~?」


太一はいつの間にかひっそり隣に立っていた塚原さんを発見していた。


「…今日は…仕事だからって……実早が……」


実早ちゃんの方を見るとノートで顔の下半分を隠しチラチラと目線を送ってきた。


メールでいいじゃん…。


わざわざ塚原さんを代わりによこさなくても…。



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