ブラウン管の中の彼女



「いいんだよ。僕は十分すぎるほど幸せなんだから」


僕は恵まれてる。


たまたま実早ちゃんと同じ年で、たまたま隣に住んでて、たまたま性別が違っただけなんだ。


そうでなかったら実早ちゃんとこうしているのは違う誰かだった。


だから僕はこの偶然に感謝しなきゃならない。


「祐ちゃんは優しすぎるよ…」


実早ちゃんがそう呟いたのを最後に沈黙がやってくる。





実早ちゃん…僕は全然優しくないよ。


いつだって実早ちゃんの心を捕らえているのは僕であって欲しいって思ってる―…。


そんな自分を隠すように優しい人の振りをしてるだけなんだ。



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