ブラウン管の中の彼女



「ああ!!うるさい!!うるさい!!」


ママは小うるさいハエを追い払うように手を振り上げた。


「だってだってぇぇ!!」


それでも実早はママに食らいついた。


「仕方ないじゃない!!スポンサーは実早を指名してきたんだから」


「誰も指名してなんて頼んでないぃ!!」


つい先日舞い降りた新発売の色つきリップのCMの話。


打ち合わせの最中にキスシーンの話が持ち上がって実早は硬直してしまった。


テーマは“キスしたくなる唇”なんだとさ!!


はったおすわよ、コノヤロウ。


「実早の唇は祐ちゃんだけのものなんだから!!」


だ~れが他の男なんかに触らせるか!!


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