ブラウン管の中の彼女
「実早ちゃん?どうしたの?電気もつけないで…」
パチッという音とともに薄暗いリビングに蛍光灯の光が溢れた。
「………寝てたみたい」
ソファーに横になっていた体を起こし、目を擦る。
「ちゃんとベッドで寝ないとダメだよ?」
ふふっと笑いがこみ上げる。
「祐ちゃん、ママみたいっ!!」
「ママって…僕は実香さんみたいな迫力ありません」
祐ちゃんは持っていたスーパーの袋を台所の床に置いた。
「そう言えば昨日、バ――カッ!!って聞こえたけどまた実香さんと喧嘩でもしたの?」
冷蔵庫の扉を開け、買ってきたものをしまう祐ちゃん。
我が家の冷蔵庫の管理権は専ら祐ちゃんにある。
ホントに主婦みたい…。
「あのね…」
実早が意を決して話し始めようとした時、ガチャッと玄関の扉が開いた。