ブラウン管の中の彼女



彗星のように突如現れた祐ちゃんは芸能界の話題を攫って行った。


な~にがクールな微笑みよ!!


クールなんじゃなくて引き攣ってるだけじゃない!!


実早は持っていたファッション雑誌をシートに叩きつけた。


見出しは“ICHIの魅了、ベスト10”


実早に言わせればワースト10もいいところだ。


ぎゅっと拳を膝の上で握り締める。


こんなことになるなんて思わなかった…っ…。


投げ捨てた雑誌には少し緊張気味の祐ちゃんの笑顔。


その笑顔が心に痛かった。


祐ちゃんの笑顔は実早だけに向けられるもの。


不特定多数の女の子を喜ばすものじゃない。


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