ブラウン管の中の彼女
「言うだけならただだよ?」
「おちょくってんのか、お前は!!」
ガシガシと頭を撫でられる。
その時、僕の携帯が鳴った。
「もしもし」
《あっ祐一郎?》
「どうしたの、実早」
実早という名前を言っただけで太一は肩をすくめた。
《後ろのビル見て!!》
携帯片手に後ろのビルを仰ぎ見る。
ガラス張りのビルの3階には笑顔で手を振る実早の姿があった。
どうして実早が!?
「太一、ごめん!!」
僕は太一に一言断ってそのビルへと近づいた。