ブラウン管の中の彼女


危ない…。


授業中に鳴らなくてよかった…。


太一を残し、廊下にでると僕は通話を開始した。


「もしも《ゆ"う"いぢろうぐんっ…!!》


僕の声はかき消された。


香川さん…また泣いてるんですか…?


こんな鼻声をだす人物の心当たりはひとりだ。


「どうしました…?」


また実早ちゃんがいなくなった…?


でも昨日の夜(正確には今日)にかなり不本意だけど相談は受けたしなあ…。


電話越しにズビーッと鼻をかむ音がした。


《わたし…実早さんのお家に大事な書類を忘れてきてしま"って"え"ぇぇぇ――!!》


香川さんは話しながら泣きだすという器用な技を使った。


「おっ…落ち着いて下さい!!」


今にも発狂しそうな香川さんをどうにかなだめる。



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