ブラウン管の中の彼女
《…グスン…》
大分気分のおさまった香川さんにホッと胸をなで下ろす。
「僕に電話したってことは届けて欲しいんですよね…?」
頭の中で授業を抜け出す言い訳を考える。
幸いにも次の授業は美術だし、後は多少面倒なホームルームを抜け出せばいい。
《お願いしますぅぅぅ…!!》
香川さんはまた泣き出しそうになっていた。
香川さんの忘れ物騒動は今に始まったことではない。
僕はいつものように引き受けようと思った。
『分かりました…学校からだと事務所まで1時間くらいだから…《あっ○○放送までお願いします。》
………はい…?
キッパリ局名を言い切るあたり、香川さんも業界人なんだなあと未だに冴えない頭で思った。