ブラウン管の中の彼女
「○○放送ってテレビ局じゃないですか!!」
ここは廊下だということは完全に忘れられた。
廊下に残っていた生徒は一斉にこちらを見たが、構っちゃいられない。
《グス…だってえ…どうしても抜け出せない仕事なんですぅ…》
香川さんの声が段々と弱々しくなる。
テレビ局ってことは…
実早ちゃんも一緒にいるってことでしょ…?
《お願いしますうぅぅ――っ!!祐一郎君しか頼める人がいないんですよぉ!!》
うっ…!!
すがりつくような香川さんに僕の良心が痛む。
このまま香川さんの頼みを無視することもできる。
でもそうすると香川さんが誰かに怒られるわけで…。
確かにテレビ局に行くのは嫌だけど…。
香川さんが怒られるのも嫌で……。