ブラウン管の中の彼女
「わかりました…」
そう答えると香川さんは嬉しそうに笑った。
《それじゃあ待ってますね♪》
さっきまで泣いていたのが嘘のようだった。
時々、香川さんはわざと泣き落としを使っているような気がする…。
あくまで心の中だけにとどめておこう… 。
僕は通話を終えると、席に戻り帰り支度を始めた。
テレビ局かあ…。
行きたく…ないな…。
僕と実早ちゃんの違いをわざわざ見せつけられるようなものだ。
「祐…?帰んの?」
カバンを肩にかけると太一が不思議そうに首を傾げた。
「あ…うん。先生には具合が悪いって言っといて」
僕はわざとらしくゴホゴホと咳をした。
無理すんなよ―という太一の間延びした声を背にし、僕は学校をあとにした。