ブラウン管の中の彼女


「祐ちゃん!!」


背中にとんっと軽い衝撃が走る。


僕は肩越しにその姿を確認した。


「実早ちゃん…?」


ぎゅうっとシャツを掴み、顔を見せないように隠す実早ちゃん。


「撮影、見たの…?」


「見たよ…?」


そう言うと実早ちゃんはますます顔を隠した。


「いけなかった…?」


「違うの~!!」


実早ちゃんは漸く顔を見せてくれた。


その顔は絵に描いたように真っ赤だった…。


よっぽどあの俳優さんが好きなのかな…。


なんだろう…。


イライラする…。


「香川ちゃんってば祐ちゃんが来てるって前もって言ってくれないんだもんっ!!恥ずかしいじゃない!!」


実早ちゃんはぷうっと顔を膨らませ、香川さんへの悪態をついた。



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