ブラウン管の中の彼女
「わかりました」
とりあえずそう言うと電話を切った。
生放送に何があるんだ…?
目を瞑ると浮かんでくるのは実早ちゃんの泣き顔だった。
ああ、思い出した…。
僕が最後に実早ちゃんの泣き顔を見たのは小学校3年の時だ。
あの時はそう…
僕と実早ちゃんの仲が良いことをクラスメートにからかわれたんだ。
僕はなんだか恥ずかしくて“実早ちゃんなんか嫌いだっ!!”って大声で叫んでしまった。
でも、みんなが一番驚いたのは実早ちゃんがわんわん泣き出したことだろう。
思い出に浸っているとチャイムが鳴った。
何にせよ、ブラウン管越しでしか見れなくなった彼女にもう少しで会える――…。
そう思うと心が震えるのが自分でもわかった―…。