ブラウン管の中の彼女
「明日の朝、また会えるでしょ?」
僕は笑いながらそう言った。
「来て…くれるの―…?」
実早ちゃんは半信半疑のようだ。
「行くよ。」
その様子に僕もクスッと笑った。
「じゃあお仕事行く」
実早ちゃんは実香さんと一緒に荷物を持った。
「行ってらっしゃい」
僕はそれを見送った。
大好きな幼なじみの君は芸能人――…。
僕はダサすぎて誰からも見向きもされない一般人――…。
でも…
それでもいいんだ。
2人の間にあったものはブラウン管じゃない。
実早ちゃんを“芸能人”として見ていた僕が作った壁だ。
壁なら壊せばいい。
乗り越えてしまえばいい。
きっと、今日も明日も1年後も実早ちゃんは芸能界のトップをひた走る。
僕は相も変わらず平凡な毎日を送っているだろう。
実早ちゃんに振り回されるということを除けばね…?
ブラウン管の中にいる彼女はいつだって輝いている――…。
その輝きを僕は一番傍で眺めるんだ―…。