誘惑Baby
「あっ開けるわけないだろ!!優子ちゃんはっ、俺のものだ!!!!」
「あ……?」
何を言ってるんだ、こいつは。
アホなんだろうか。
そういえば、ストーカーとか言ってたな。
自分でも、不思議なくらい、冷静だった。
でも、確実に怒りだけが増していくのはわかって。
抑えていなくては、今にでも叫び出しそうだった。
「ゆっ優子ちゃんはっ、お前に騙されてるんだ!!優子ちゃんはっ、俺のために生きてくれれば、それでいいのにっ」
もはや、男の声などただの雑音だった。
頭の中には、優子のみだった。
優子、優子、優子…。
抱きしめたい。
触れたい。
守る…。
ガッシャーン!!
「ひっ…!」
窓を素手で割ると男は、怯えているようだった。
「ごちゃごちゃ、っるせんだよ」
窓から部室に入ると、ストーカー男は全く眼中に入れず、優子だけを見つける。
「よおへ…い…」
手は紐で縛られていて、服は乱れていた。
「優子、ごめん…」
ゆっくり近づいて、紐をほどく。
「おいっ、やめっ!!」
「寄るな、変態。殺されてぇのか」
そっと、優子を抱き寄せ持ち上げながら静かに呟く。
「ぐっ……」
「二度と近づくなド変態。本当に好きな女なら、こんなことしてねえで、正々堂々向き合えよ」
男を見ると、高校生だった。
田崎の弟だろう。
冷たい目線を浴びせると、悔しそうに目線を逸らした。