誘惑Baby
鍵を開けて、外に出る。
「陽平…、陽平…」
「うん」
抱き上げている腕に力を込める。
まだ、優子は震えてるようだった。
「陽平ー……」
俺にしがみつく優子は、泣いていて、すごく、すごく息苦しくなる。
こんな怖い目に合わせた俺が悪い。
守れなかった、俺が悪い。
優子……
「ごめん、ごめんな…。優子ごめん………」
「うー……」
ベンチにゆっくり座らせると、優子は俺の腕にしがみついてきた。
ポロポロ落ちる涙が、心に響く。
「陽平、……!!陽平っ手!!」
今まで泣いていたかと思えば、俺の手を見て顔を青くした優子。
俺の手から
血が流れていた。
今まで、全然気づかなかった。
優子のこと、かなり好きだとは自分で思ってはいたが、こんなに強い思いがあり、こんなに我を忘れられるほどとは、少し自分でもびっくりした。
「ごめっ、陽平ごめんっ!!」
俺の手を包む優子の手は、震えていた。
「ごめんなさいっ!!」
必死に何度も謝る。
狂おしいほど、愛しい。