誘惑Baby


優しく抱きしめてみる。

頭を撫でてみる。


震えは止まったようで、しゃくりあげる声だけが響く。


「守れなくて、ごめんな」

きつく、きつく腕の中の優子を抱きしめる。


「陽平、あのね…。創汰くんはね、…田崎創汰くんは…元カレなの…」


ぽつり、ぽつりと話始めた優子は俺の背中にそっと、腕を回した。


「高校生のときに、付き合ってた人。あまりに、しつこく告白してきて…断りきれなくって…。」

「…」


「なんとか、別れたのが陽平と出会ったころ…。けど、最近…ストーカーみたいにされてて…。マフラーも、靴も、創汰くんが持ってた。」


声が震えているのが分かる。

「陽平と一緒の科に、創汰くんのお姉さんがいるんだってね…。
お姉さんは、陽平が好きだって…。あたしの物を盗んだのはお姉さんだって…」


話し終えた優子は、背中に回った腕を震わせ、体を強ばらせる。



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