誘惑Baby


「なんで、頼らなかったの…?」

なるべく優しく、問いかける。

「陽平っの、迷惑…に…なりたくなかった…」


「あほか…」

「ごめんなさいっ…」


辛かったんだろう。

悩んだんだろう。


あの時、中庭で泣いていたのも…。

無理して笑っていたのも…。


どうして
気づいてやれなかったんだろう…。


胸の奥から、きゅうとなにかが込み上げる。



「……、なあ優子」

「ぐすっ、うん…?」


「俺は、そんなに頼りない…?」

俺の腕の中で、優子が首を横に振る。


ゆっくり、体を離す。

涙で、化粧もなにもぐちゃぐちゃなのに、愛しく感じる。


「なら、頼れよ。ばーか」

でこぴんをすると、一瞬驚いた顔をして、ふわって微笑んだ。


「……陽平。あたし、わがままだよ…?」

「なに、知ってるよ?」

「…頼りっぱなしになるよ?」

「ん、いいよ」

「あったし…やきもち焼きだよ…っ?」

「ははっ!いいよ、可愛いじゃん。やきもち」


ぽんぽん、と頭を軽く叩くと涙をまた流す優子。

「……陽平ー…」


「泣くなよ、ばか」



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