誘惑Baby
クリスマス
あの事件が起きてから、だいぶ時間がたった。
田崎にも、これ以上優子に手出すなって言ったら、あれ以来なにもしてこない。
油断は出来ないけど、ひとまず落ち着いた気がする。
手の怪我も治ってきた。
しかし、大きな問題が………一つ……。
「はああぁあ?!まだ、ヤってないだとおぉ!?!」
「し、静かにしろよ!!」
大学のカフェで一樹の叫びがけたたましく響いた。
「お前っ、もう一年以上付き合ってるんだろ!?」
「ん…」
「そうゆう雰囲気にならねえのかよ?!」
「別にならない、わけじゃねえけど…」
そう、俺の悩み…それは…まだ優子とそういうことをしていないこと。
「大事にしてたら、いつのまにか今だったってゆうか…」
さすがに、恥ずかしさもあり目線を逸らす。
「…………陽平」
「ん?」
「明日は何の日だ?」
「クリスマス、だろ?」
「……ヤれ!!!!!!!」
ガシッとおれの肩を掴んで、鼻息を荒くする一樹が俺にそう言った。
「ヤれ…って…、んな急に…」
「なあに、うじうじしてんだよっ!!優子ちゃんだって、待ってんぞ!?」
待ってる…?
そうなのか…?
そりゃ、俺だってしたくないわけじゃ…ないんだけど…。
優子次第なんだけど……。
「はあ…」
小さく、ため息が零れた。