誘惑Baby
異変
「今日、午前二時頃、○○市○○区で暴行事件が……」
「物騒だなあ…」
俺は、テレビを見ながら呟く。
キッチンからは、洗い物の音がしていた。
「刃物なんて、持ち歩くなよ…」
テレビの中で、淡々と事件の事情を話すニュースキャスターを、なんとなく冷酷だと思った。
「いやだねえ、こういうニュース」
洗い物を終えた優子が、俺の隣に座る。
「ん、最近多いらしいからな。」
実はこのところ、相次いで暴行が起こっていた。
「ん、みたいだね…」
心なしか震えた声な気がした。
「優子?」
「……」
「優子!!」
「っえ?!」
びっくりしたように、俺を見る。
「どした?」
一瞬目を泳がせてから、なんでもないよと笑った。