誘惑Baby

「陽平っ!!」


滅多に大きな声を出さない優子が、俺を呼んだ。

ゆっくり振り返ると…


「お、わっ!!」


凄い勢いで抱きついてきた優子が居た。


「え、優子?」


きつく、きつく俺を抱きしめる。

まるで、どこにも行かないでと…すがる子供のように。


「どした?…優子?」


いつもより、だいぶ小さく弱く見える優子に俺は小さな胸の騒ぎを、感じていた。



「ご、めん…。寂しくて…」


しばらくしてから、下を向いたまま優子は体を離した。


「引き止めちゃったねっ、ごめん!!」


眉を下げて、いつもは見せない、無理な笑顔で笑った。


「なんかあったのか?」


言い方を間違えただろうか。

なにかあったから、優子がここまでしてるのだから。


「違うの。わがまま!!寂しいだけ!!」


分かるんだよ、優子。

無理して笑っても、なにか俺に気付いて欲しいんだろう?

どうして、意地を張る?




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