誘惑Baby
「陽平っ、陽平っ」
何度も何度も呼んでいた。
俺の腕の中で、声が掠れても。
優子は呼ぶことをやめなかった。
何かに怯えるような、怖がるような…そんな様子で。
優子が俺を呼ぶたびに、きつくきつく…抱きしめていた。
―――……
結局、あの後…疲れたように立ったまま寝てしまった。
仕方なく、マンションの部屋まで送り合い鍵で中へ入れた。
起きる気配のない優子に、手紙を置いて家を出た。
あんな優子、見たことがなかった。
初めて見る一面だった。
俺は、正直どうするべきなのか…
分かっていなかった。
次の日、朝からニュースでは連続レイプ犯の話題で持ちきりだった。
『今回のこの事件の犯人は、二年前にも起きた暴行事件の犯人と同一犯だと思われ…』
そういえば、このニュースを優子と見たときから様子がおかしかったように思える。
まさか二年前の被害者?
『狙うのは、決まって大学生。』
いや、一樹はそう言っていたし…二年前なんて優子はまだ高校生だろう。
しかも、この事件と優子の異変を繋げるのは無理矢理すぎるな…。
悶々と、色んな考えを巡らせながら大学へと向かった。