誘惑Baby


「本当に、本当に苦しかった。前からストーカーみたいなことされてたから…。わかってたのに…お姉ちゃんを犠牲にしちゃったの…。」


声が震えていた。

自分を責めるその様子に、ただ隣に座ることしか出来ないのが苦しかった。


「あたしがっ…。あたしが…そうならなきゃいけなかったのに…」


ポタポタと、震える手に涙が落ちていた。


咄嗟に抱き寄せ、強く強く包み込む。


「…違う」


「お前は…、お姉さんに守られたんだ。だから、強くならなきゃいけない。自分のためにも、…お姉さんのためにも」

「っ、うわぁああ!!」

腕の中で泣き叫ぶ彼女は儚く、腕を解けば消えてしまいそうだった。


一年も付き合ってきたのに、こんなに大きな傷に気づけなかった自分が…ひどく情けない。

自分が、嫌で嫌で仕方なかった。




しばらくして、泣き止んだ優子はゆっくり俺の腕から離れる。


「もう…大丈夫なの?」


「ん、ありがと…」


鼻声で小さくそう言う優子。


「ぐすっ、こんなに泣いたの…久しぶり」


腫れた赤い瞳をまだ潤ませながら笑う姿に、切なくて胸が痛んだ。




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