誘惑Baby
「…ごめん、な…。気づけなくて…。」
目を見て言うと、優子は優しく微笑んだ。
「どうして陽平が謝るの?そんなの気づけるぐらいの完璧な人を陽平に求めてないもんっ」
首を傾げて面白そうに笑う。
「ひでー…」
「だって、何もかも気づかれたら疲れちゃう。陽平は陽平だからいいの。ちょっと鈍感な陽平だから、好きなの」
白い小さな手が俺の頬に伸び、優しく触れる。
「俺、…鈍感?」
「ん、鈍感!!自覚ないの?」
「まあ、自覚ないから鈍感なんだろうよ」
渋い顔で言うと、優子はあははと笑った。
笑顔を見て、俺も笑った。
今まで2人で歩いてきた道は、時に1人で歩いていたのかもしれない。
でも、時間をかけて…今隣同士で笑っている事実は変わらない。
例え1人で歩いた時があったとしても、それがあったから今がある。
だから、優子。
ゆっくり知っていこうと想うよ。
君のことも、これからの2人のことも。
ゆっくり、ゆっくり…二人で。