誘惑Baby
「はっ離してよぉ!!」
バタバタと暴れる優子を抱きかかえて、部屋に戻る。
「離しませんよ、やっと捕まえたんだから」
「バカバカっ!!触んないでよ、浮気者!!」
「うるさい、黙れ。口塞ぐぞ」
「…!?うー…」
やっとの思いで部屋まで連れ戻すと、あからさまに頬を膨れさせている優子。
「言い訳なんて聞きたくないんだから」
「いや、聞いてもらう」
「聞かないってばあ!!」
「あのな、あれは」
「人の話聞いてるのー!?」
「一樹のだから」
「だからっ………、へ、ぇ??」
マヌケな声がぽつりと、零れる。
「一昨日、一樹が泊まりに来てて…。ほら、裏見てみ?」
優子にさっきの指輪を渡すと、おどおどしながら指輪を見つめる。
「kazuki…akane…。あかね…?」
「元カノなんだと。部屋掃除してたら出てきたとか言って家に来たとき、どっか投げてたんだよ」
そう。
一昨日、泊まりにきた一樹は夜中になる頃にはベロンベロンに酔っていて、昔の恋について熱く語っていた時に持ち出したものだったのだ。
酔った勢いで、こんなものいらねー!!とか言って投げていたのがコレだったということ。