誘惑Baby


(あー、ちきしょー…かわいい…)

「ごめん、なんもないよ…」


くしゃくしゃっと頭を撫でると、嬉しそうに顔を綻ばせた。


「あー、はいはい。いちゃいちゃしないよー。そこ」


ふわふわと甘い雰囲気をぶち壊す低い声。
もちろん、一樹である。


「んだよ、邪魔すんな」

「だってあんまり仲いいから…。かずくん寂し「きもい」」


俺の扱いに泣き真似をする一樹は、今更ながらにMだと思う。


「ごめんごめーん!!待った??一樹」


向こう側から慌てて走ってくる坂井さんを見た瞬間、目の色を変える。

「美っ希ちゅわああん」

「あー、もう。うるさいよ!!」

「ひ、ひどいっ。美希ちゃんひどっあぐ」

坂井さんは一樹の口を片手で挟んでいた。

「ごめんねー。二人とも。うるさくて」

あいている手を顔の前で合わせる。

坂井さんは、相当なやり手だと思う。
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