誘惑Baby
「なにしてんの、」
小さく丸くなった体が濡れていた。
「優子」
ゆっくり顔を上げた優子は心なしか顔が赤くて。
いつもはふわふわの髪も、今日は雨に濡れてポタポタと雫が落ちていた。
「びしょ濡れ…じゃん。…どした??」
優子と同じ高さまで屈むと、髪に触れる。
「会いたくて…。」
薄い唇から弱々しくこぼれた言葉。
小さく小さくつぶやいた。
「………。傘さして来なよ、ばか。」
優子の手を取り立ち上がらせると、家の中に入れた。
なんとなく、何かあったことは分かるから。
あえて何も聞かないことにする。
「ちょっと待ってて。タオル持ってくるから」
「陽平…」
離そうとする俺の手を、小さな冷たい手が掴んだ。