誘惑Baby
「美っ希ちゅわん!」
「うざい」
俺の一樹の扱いと、極めて似ている。(笑)
「美希、相変わらず一樹さんに冷たい…」
優子が若干憐れみの目で一樹を見ていた。
俺たちは、いわば運命のような出会いで。
たまたま、優子が一樹の彼女の友達で。
優子からしてみても、たまたま俺が坂井さんの彼氏の友達だった、という偶然なのか必然なのかわからない状況にあった。
ちなみに一樹たちの方が、長い付き合いである。
「優子は今日、杉浦さんとデートでしょ?」
ナイス!坂井さん!
心の中で坂井さんに親指を立てた、俺。
「あ、うん!!行こっか陽平!」
「え、ああ」
優子が、当たり前に手を繋ぐ。
暖かいなあ…。
「じゃあねー!!」
と、言って一樹たちと別れた。
俺の隣で、今日の講義について話す優子は、どこか嬉しそう。
そんな、優子を俺も微笑みながら見ていると、マフラーをしていないことに気づいた。
「優子?マフラーは?」
「あー、忘れちゃったの」
へへへ、と鼻を赤くして笑う優子が可愛くて。
思わず、くしゃくしゃってして、俺のマフラーを巻いていた。
「いっいいよ?!陽平寒がりじゃん!!」
「うるさい、黙って付けときなさい。」
もう一度、頭を撫でながらそう言うと、ぽっと頬を赤らめて小さく頷いた。
気づいて、いるだろうか。
些細な仕草に、些細な表情に、どれだけ俺が夢中になるか。
本当に君は、ズルいんだ。