誘惑Baby

二人で、寒い真冬の道を笑いながら歩いた。



…――――



「あたし、この本買ってくるね!」

「ん、わかった」


小走りでレジにかけていく優子を見送りながら、本に目を向けた。


10分ほど、しただろうか。

優子が、帰ってこない。

(迷ってんのかあ…?)


俺は、優子の携帯を鳴らしながら探した。

プルルルル…
プルルルル…


聞こえるのは機械音だけで、一向に出る気配がない。

「ったく、どこ行ったんだよ…」


探し回っていると、優子の後ろ姿らしきものを見つけた。


「ゆ……」


優子、と声をかけようとしたとき、俺の目に映ったのは高校生に囲まれている優子の姿。



「おいおい………」


おれは、小さく声を漏らして優子に近づいた。


「優子先輩、彼氏いるんすかー?」
「ぎゃははは!!」

「…ちょっ、いい加減…」


「俺の彼女になんか用?」


俺は、後ろから優子の腕を引っ張り引き寄せる。

「え……」

「あ、優子先輩の彼氏…?!」

口々に慌てたように喋り出す。


なんか、こいつら…超腹立つ。


「消えろよガキ」

「「あ…すいません…!」」

俺の機嫌の悪さに、高校生どもは消えていった。

「優…」

「陽平ぇ……」


俺の腕にしがみつく優子は、心なしか震えていた。


「…あっち…、座ろ」


頭を軽く撫でると、小さく頷いた。




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