恋する手のひら
「秀平はもう私なんか見てないから、彼女がいようと別れようと変わらないよ」

タケルを安心させたくてそう言ったのに、タケルはまだ私を強い力で抱きしめてる。

もう、本当に心配性なんだから。
そんなタケルが愛おしく思えて、私は彼の頭をそっと撫でる。

「もし…」

タケルがぽつりとつぶやく。

「もし秀平が…」

タケルはゆっくりと体を離し、私を見た。
その目がすごく真剣で、私は思わず息を飲む。

彼がそこで言葉を切ったものだから、続きが気になる。
タケルは何を言うつもりなんだろう。

「───ごめん」

タケルが何で謝ったのか分からない。
だけどそうつぶやいたきり、タケルがその続きを口にすることはなかった。
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