恋する手のひら
「行くの?」

秀平に掴まれた腕が次第に熱を帯びていく。

「あの…。
秀平、喉乾いてるかと思って、自販機に…」

「いい」

秀平は真剣な顔でそう言い、ゆっくりと私の手を握りしめていく。

「何もいらないから、もう少しだけ…」

弱ってるときは誰かに頼りたくなっても仕方ないけど。
そんな目で見られたら、誰かじゃなくて私に側にいて欲しいんじゃないかと誤解しちゃうよ。

私は秀平の目を直視できず頷くと、ぺたんと隣に腰を下ろした。

秀平は私の手を握ったまま。
どうして手を離さないの?
もう出て行かないと分かっているはずなのに。

頭が働かない。
冷静になれない。

秀平と繋がっている手に、全神経が集中してるみたいだ。

恐る恐る見上げると、秀平は黙ったまま私を見つめていた。
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