恋する手のひら
「───あんなこと言ってたけど、二人ともタケルのことすごく応援してたんだよ」

私はタケルの正面にしゃがみ込む。

「お疲れ様。
喉渇いたでしょ?」

ペットボトルを差し出すと、タケルはぷいっと顔を背けた。

「別に」

「もう、最後追い上げられたからって不機嫌になっちゃって」

そう言って私がタケルの頬に冷たいペットボトルを当てた瞬間、彼にそれを振り払われた。

ペットボトルが鈍い音を立てて体育館の床を転がる。

え…?

私は何が起こったのか理解できなくて、振り払われた自分の手とタケルを見比べてしまう。

タケルの視線が怖いくらいにきつい。

何?
どうしたの?

さっきまで久美子たちと話してたときはいつも通りだったのに。

「さっき、秀平と何してた?」

タケルが睨むように私を見る。

「何って…」

「あの後、実果が席に戻るまですごい時間かかってたけど、二人で何してた?」

タケルは、私がいつもあの二階席から応援してるのを知っていた。
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