恋する手のひら
「どうして否定しないの?」

それじゃ、記憶を取り戻したって認めたのと同じだよ。

私は秀平の腕を掴んで揺らす。

「本当に?
ねぇ秀平、本当に思い出してるの?」

答えてくれない秀平に痺れを切らして、私はタケルに向き直る。

「タケルは?
何で何も言わないの?
秀平が思い出してるかもしれないんだよ?」

タケルだって秀平の記憶が戻って欲しいはずなのに、何でそんなに冷静でいられるの?
もしかして…。

「───タケルも、知ってたの…?」

まさかとは思ったけど、タケルが黙っている以上、そうとしか考えられない。

何で私だけ知らないの?

そのとき、秀平が私の手を取り、彼に掴んでいた手を離れさせると、

「隠しててごめん…。
本当は、少し前に全部思い出してた」

そう、つぶやいた。
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