恋する手のひら
付けていたストラップが足元で音を立てる。

大事にしてたのに、傷付かなかったかな。
こんなに体調が悪くても、そんなことはしっかり気になってしまう。

拾おうとして手を伸ばすと、私より先に誰かの手が携帯電話に触れた。

「───これって…」

拾い上げた人が口を開く。

私はぼやけた視界の中で、その顔を見る。

秀平…?

携帯電話を持って目の前に立っていたのは秀平のように見えた。

朦朧とした意識の中で彼の顔を見てホッとしたのか、私はその直後に意識を失った。



夢を見た。

夢の中では秀平は事故に遭ってなくて。
私もタケルと付き合っていなくて。

夢の中の私は、秀平とタケルと、海で楽しそうに笑っていた。
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