恋する手のひら
だからタケルはこの間、俺を応援してくれと頼んだんだ。
秀平じゃなくて、タケルが推薦を取れるように。

私はあのときその意味が分かってなくて、安請け合いをしてしまった。

一心不乱にボールを追う秀平とタケルは真剣だった。
そんな二人を見ながら、私は唇を噛む。
私だけ逃げてちゃだめだ。

いつも私を支えてくれるタケル。
全てを包み込むような安心感に身を任せていれば、いつか秀平を忘れられるんじゃないかとも思った。

だけど違う。
秀平を乗り越えるためには、私自身がけじめをつけなきゃいけないんだ。
傷付くことになると分かっていても、秀平にちゃんと気持ちを伝えてからじゃなきゃ、タケルにさえ向き合えない。


結局タケルたちは善戦の末、負けた。
相手はインターハイ常連校だから仕方ないのに、試合後コートに膝をつき肩を落とすタケルに掛ける言葉が見つからなかった。

こうして二人の夏と共に、私の猶予期間は静かに幕を閉じたんだ。
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