恋する手のひら
「あれ、本体だけで足がない」

持ってきた資料と実際の数を照らし合わせていた秀平がつぶやく。

言われてみれば、確かに部品が明らかに少ないかも。
私たちは再び倉庫を見回す。

「あ、あれかな」

棚の上にテントの足になりそうなパイプの束を見つけた私は、側にあった脚立を持って来て棚の上を確認しようとする。

「危ないから俺が上る」

脚立が古くて不安定なのを見て秀平はそう言ってくれたけど、私は首を振る。

「いいよ。
高いとこ苦手なくせに、強がっちゃって」

図星だったようで秀平は黙る。

秀平は実は高所恐怖症。
いつもすましてる分、こういうところはかわいいなんて言ったら怒られるだろうな。

「ちゃんと押さえててね」

私は秀平に念を押して脚立を上り始める。

棚に掴まりながらでないとガタガタ揺れる。
やっぱり秀平に上らせなくて正解だった。

脚立の一番上まで上って棚を確認すると、束ねられたパイプには文化祭用テント、とタグが付いていた。
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