恋する手のひら
瞬時に私と秀平の体が固まった。

声を聞いただけで誰か分かる。
だってこの声は、いつだって誰より私の側にいてくれた人の声だから。

ゆっくりと振り返る私たちの前に立っていたのは、冷めた目をしたタケルだった。

「何してんだって聞いてんだよ!」

何も言わない私たちに耐え切れず、タケルの語調が強まる。

「───お前らが倉庫に点検に行ったきり帰って来ないって聞いて来たら、これかよ」

タケルの顔が歪んでいく。

仕方ないよね。
もう一度ちゃんと付き合いたいと言ってくれたタケルに、秀平のことを振っ切るまで待っててもらっていたはずなのに。
きっと、これ以上の裏切りはない。

「何とか言えよ!」

タケルは怒りをぶつけるように、足元に散らかっていた鉄パイプを蹴った。
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