恋する手のひら
何それ。
何でそんなこと、二人で勝手に決めちゃうの?

それに…。

「待って、そんな約束無効だよ。
だって本当は…」

その瞬間秀平がハッとして私を見た。

タケルには言わない約束だけど、言わずにはいられなかった。

「秀平ははじめから推薦を辞退してたんだから」

その言葉で空気が変わったのが分かった。

タケルは掴み掛かった秀平の胸元を離すと、呆然としてつぶやいた。

「何だよ、それ…」

「秀平は推薦を断ったの。
迷ってる自分が行く訳にいかないって、推薦枠をタケルに譲ったんだよ!」

それがタケルのプライドを傷付けるのは分かっていたけど、私の口は止まらなかった。

「迷ってたって何だよ、K大だぞ?
バスケの名門だぞ?」

タケルは訳が分からないと言うように首を振り、秀平を見る。

「お前だって、バスケ続けたいって言ってたじゃんか。
何を迷ってたんだよ…」

それは建築の勉強がしたかったから、そう私が説明しようとしたとき、

「迷ってたのはバスケを続けるかじゃない」

秀平がそう言ったから私は驚いた。
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