恋する手のひら
「迷ってたのは、実果とやっていけるかだよ」

秀平は私に目を向ける。

「あのとき、俺には自信がなかったから」

あのとき。
秀平が言ってるのはきっとインターハイで負けた日、あの公園でのことだ。

あの日秀平は言った。

『俺には、実果と上手くやっていく自信がない』って。

今もはっきりと覚えている。

すごくショックだったけど、秀平が悩んで、悩んだ末に出した答えだと分かったから、私はそれを受け入れた。

「今も自信がある訳じゃない。
だけど、実果を諦められない」

「何だよそれ…。
自信がなかったとか、推薦を俺に譲ったとか」

タケルの声が震えてる。

「俺だけが知らなかったのかよ。
俺だけが勘違いして、お前に勝ったって喜んでたってことかよ…」

タケルに掛ける言葉が見つからない。

「俺一人で、バカみたいだ」

タケルはそう吐き捨てるように言うと、私たちと目を合わせることもせず、倉庫から出て行った。
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