恋する手のひら
目の前が突然真っ白になった。
足元から崩れていきそうになったとき、再び扉が開いた。

「───冗談に決まってるだろ」

タケルは困った顔をしながら、私の腕を掴んで彼の部屋に引っ張り込んだ。

彼のベッドに腰を掛けて涙を拭っていると、

「泣くなって。
俺が悪いみたいじゃんか」

タケルは机の上にあったティッシュペーパーを箱ごと渡しながら、ふて腐れたようにつぶやいた。

「だって…。
タケルを怒らせちゃったから…」

ティッシュを一枚取って涙を抑える。
これ以上泣いても、タケルをもっと困らせるだけだ。

「別に、怒ってるわけじゃねぇよ」

私は驚いてタケルの顔を見た。

「そりゃ、しっかり傷付いたけど」

「嘘だ、怒ってる。
さっきだって、学校でだって、私のこと睨んで無視したじゃん」

タケルのあんな睨むような目、初めて見たもん。

タケルに冷たくされて初めて、今まで彼がどれだけ優しかったのか気付いたんだよ。
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