恋する手のひら
「このあとも係の仕事で集合がかかってるんだ。
二人で行って来いよ」

誘導係も楽じゃないよ、と笑うタケルになんとなく違和感を覚える。
もしかして気を遣わせてるのか?

だけど実果は俺とは反対で、全く怪しむ様子もなく残念そうな顔を浮かべてる。

「一緒にお店回れないんだ…」


実果とタケルは、割とすぐに元通りになった。

あまりにすぐタケルが態度を戻したもんだから、本当に振っ切れたのか怪しいもんだけど、彼は必要以上に実果に話し掛けなくなった。

あとは実果がタケル離れをしてくれれば、何も心配はないんだけど…。

「休憩は何時?
お昼は一緒に食べられる?」

実果が聞くとタケルは少し困った顔になり、時間ができたらメールするよと言って去って行った。

タケルに置いてきぼりにされて目に見えてがっかりする実果に、少しムッとする。

そりゃ俺よりずっとタケルの方が側にいた時間は長いけど、俺を選んだからには、他の男にそんな顔をしないで欲しい。

なんて。
まさかそんなこと恥ずかしくて本人には言えやしないけど。
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