恋する手のひら
二人が元通りになったのは俺だって嬉しいけど、実果があまりにタケルにべったりだから、少しだけ心配だったりする。

「残念。
二人っきりになっちゃったね」

俺を見て眉を下げる実果に、俺と二人じゃ不満なのかよ、と突っ込みたくなる。

多分実果は、俺がこんなに嫉妬深いのを知らないんだろうな。
目の前であどけない顔をした実果を見ながら、俺は内心で溜め息をついた。

「あ、いたいた。
実果ー!」

そのとき遠くから実果を呼ぶ声が聞こえた。

振り返るとA組の女子が二人、実果に駆け寄って来る。

確か実果の中学からの友達。
タケルとも仲がいいから、俺のことをタケルから実果を横取りした奴だと思ってるのか、心なしか視線が冷たい。

だから面識はないけど少し苦手。

「一緒に1-Dの模擬店行かない?
佐々ちゃんが客引きしてるんだって」

佐々本か。
憧れてる生徒、本当に多いよな。
確かにあれだけ見た目も性格も良ければ当然だけど。

実果も案の定、目を輝かせているので、俺は苦笑しながら手をパタパタ振って言う。

「いいよ、行ってきて」
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